【Ohm Shanthi Oshaana】 (Malayalam)
この週末はマンムーティ主演の【Praise The Lord】を観るつもりだったが、隣のホールではナスリヤ・ナシーム&ニヴィン・ポーリ主演の【Ohm Shanthi Oshaana】もやっており、結局後者にした。というのも、先日の【1983】鑑賞記の中で、マラヤーラム映画界もヤング層をターゲットにした映画を作り始めている、といったことを書いたが、なるほど若者の描き方にはリアルなものが見られ、現実の若者たちの共感を得ているであろうことは観察できたが、この世代にとっては肝心のテーマ、すなわち、ラブストーリーという点ではどうか、という疑問が残っていたからである。で、この【Ohm Shanthi Oshaana】がどうやらその空白を埋めるピースの1つになりそうだと思われたので、「では実地検分を」となったわけである。
本作の公開は先月の7日で、すでにヒット宣言が出ている(バンガロールでもロングランとなっている)。バナーは「E4 Entertainment」で、これは【Annayum Rasoolum】(13)、【Neelakasham Pachakadal Chuvanna Bhoomi】(13)、【North 24 Kaatham】(13)を送り出した制作ハウス。
題名についてであるが、英字表記がばらついているが、とりあえず下記のようにした。何であれ、読み方は「オーム・シャーンティ・オーシャーナ」。意味については下でコメントする。
【Ohm Shanthi Oshaana】 (2014 : Malayalam)
物語 : Midhun Mannuel Thomas
脚本 : Midhun Mannuel Thomas, Jude Anthany Joseph
監督 : Jude Anthany Joseph
出演 : Nazriya Nazim, Nivin Pauly, Vineeth Srinivasan, Aju Varghese, Renji Panicker, Vinaya Prasad, Shobha Mohan, Manju Sathish, Nikki Galrani, Akshaya Premnath, Oshein Mertil, Vijayaraghavan, Harikrishnan, Lal Jose(特別出演)
音楽 : Shaan Rahman
撮影 : Vinod Illampally
編集 : Lijo Paul
制作 : Alwin Antony
題名の意味 : (お祈りの句。ヒンドゥー教とキリスト教がミックスしている。)
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ロマンス
公 開 日 : 2月7日(金)
上映時間 : 2時間10分
◆ あらすじ
ケーララ州のとある地方の町に暮らすプージャー(Nazriya Nazim)は、裕福な医者マーテュ(Renji Panicker)の一人娘。アーチェリーをしたり、バイクに乗ったりのお転婆な16歳だったが、ある日、おばのレイチェル(Vinaya Prasad)に啓発され、恋愛結婚こそが理想だと目覚める。早速プージャーは相手探しを開始し、学校で一番の人気者ヤードリー(Harikrishnan)に接近するが、ひょんな経緯から全く別の男に一目惚れすることになる。それはギリ(Nivin Pauly)という名で、近くの村で母と二人で農業をしており、趣味はクンフーという男だった。
実はギリはプージャーの両親やレイチェル、またはいとこのデーヴィッド・カンジャニ(Aju Varghese)とも面識があった。プージャーは彼らからギリについていろいろ聞き、彼こそが自分の生涯の伴侶だと確信する。そしてギリの誕生日に、プレゼントも用意して、思い切ってプロポーズするが、拒否され、逆に彼女の年齢なら学業に専念すべきだと諭される。
しかし、これで挫けるプージャーではない。彼女は猛勉強をし、コーリコードにある医科大学に入学することが決まる。そして、そのことをギリに報告しようと村まで行くが、残念ながら彼の母スミトラ(Shobha Mohan)からギリがクンフーの勉強のため中国へ行ったと告げられる。
コーリコードでプージャーは女友達とありがちなカレッジ生活を送る。そして、若い医者で教官でもあるプラサード・ヴァルキー(Vineeth Srinivasan)と親しくなる。そんな時に、彼女の大学の病院にギリがひょっこり姿を現す、、、。
・その他の登場人物 : プージャーの母アンニ(Manju Sathish),テンナル(Nikki Galrani),ジェイコブ(Lal Jose)
◆ ざっくりしたコメント
・主演のナスリヤ・ナシームも可愛かったが、作品全体がカワユくてカワユくて、川縁オジサン、涙々。どんなにカワユいかというと、こんなイメージ(下)。私は好きだが、しかし、日本人鑑賞者に強くアピールするものかというと、どうもそうでないような気もする。
・上で、ヤング映画といっても、ラブストーリーというジャンルで里程標となり得るような画期的作品が現れたか、という疑念を書いておいたが、マラヤーラム・ニューウェーブ系の作品にももちろん恋愛映画がないわけではない。例えば、【Annayum Rasoolum】なんかは間違いなくラブストーリーに入るが、ただ、作り手の力点の置きどころは「ロマンス」とはまた違ったところにあるような気もする。要は、テルグの【Happy Days】(07)や、カンナダの【Moggina Manasu】(08)や、タミルの【7G Rainbow Colony】(04)のような、ヤングスターの恋愛観に何らかの変化をもたらすような作品が現れたか、という疑念なのだが、本作はその「一例」になるんじゃないかと思う。
・ストーリーという面では、本作は起伏もヒネリも乏しく、他愛のないものかもしれない。物語はヒロインであるプージャー(Nazriya Nazim)自身のナレーションで進む。ラブストーリーといっても、クライマックスまで特に何事も起こらず、プージャーの憧れ、片想いが綴られているだけ。しかし、プージャーの心情の描き方が巧みで、演じたナスリヤも上手く、非常に爽やかな初恋成就物語となっている。
・そのプージャーの心情を象徴しているのが本作の題名だ。「Ohm Shanthi Oshaana」の意味は、前半の「オーム・シャーンティ」は(説明しなくてもいいと思うが)ヒンドゥー教のマントラで、「平和でありますように」、後半の「オーシャーナ」はキリスト教の典礼で神を賛美する言葉として使われるもので、「救い給え」の意(イエス・キリストのエルサレム入城の際に民衆が祝福して発した句として有名。日本では「ホサナ(Hosanna)」と発音/表記されることが多いと思う)。そんな説明はさて置き、要するにこの一句には、うら若き乙女が好きな男のことで一喜一憂し、「神さま、イエスさま、お願い!」と祈願する気持ちが表現されているのだが、彼女のこの気持ちが想像できる人なら、本作を観て、随所で泣けるし、笑える。
・プージャーとギリ(Nivin Pauly)は、お互い惹かれ合いながらも、結ばれるまでに7,8年の歳月を要している。つまりは、どんくさい男女の物語だったのかもしれない。しかし、「実は、ずっと彼/彼女のことが好きだった」という気持ちは本作の重要なモチーフだ。インドの若者たちは、恋愛という営みにおいては、日本の若者ほど多忙ではないと思うが、それでも「彼/彼女のことが好き」という相手がいないはずがない。ただ、言い出すことができず、結局は親の選んだ相手と結婚することになるのだが、本作の登場人物のようにように、一歩踏み込む勇気があったなら、周りに良き理解者がいたなら、グッドタイミングで背中を押してくれる人がいたなら、全然違った人生を送っていたはずである。この「秘めたる想いの成就」というモチーフが、ケーララのお若い方を刺激した可能性はある。
・ただ、本作はタミル映画のような「やっちゃった」、「できちゃった」というような激しい内容はなく、駆け落ち騒動もない。実にプラトニックなもので、監督は意図的に現代的/都市的/進歩的な要素を避けた節がある。これなら親の世代の感情を逆なですることもない。こうした点も本作がスーパーヒットに結び付いた要因かなと思う。
・ここまでナスリヤ演じるプージャーを中心にコメントしてきたが、実は本作はナスリヤの一人舞台というわけではない。相手役のニヴィン・ポーリ(ギリ役)はニュートラルな感じで強いインパクトはなかったが、その他の脇役たち、例えばプージャーの両親(Renji Panicker & Manju Sathish)、おばのレイチェル(Vinaya Prasad)、いとこのデーヴィッド・カンジャニ(Aju Varghese)、ギリの母(Shobha Mohan)、カジュアルな医師プラサード・ヴァルキー(Vineeth Srinivasan)、作家で出版屋のジェイコブ(Lal Jose)などのサポートが効いている。
・物語の時代は現代ではなく、近過去となっている。プージャーの誕生が1983年(実はこれはJude Anthany Joseph監督と同じ)で、ストーリーは1999年から始まる。彼女は当時第10学年の16歳。そこから足掛け6~8年、物語のエンディングまで入れると10年以上(たぶん現在まで)のタイムスパンが描かれている。私がインドに住み始めたのが98年なので、私にとってもプチ・ノスタルジックな映画となっている。
・1999年当時のケーララの田舎にプージャーのようなキャラクターがいたのかなぁ、という疑問はある。しかし、監督自身がわざわざプージャーを同時代人と設定しているのだから、こんな娘もいたのだろう。
・時代の提示の仕方は面白い。年代が字幕で表示されるのは冒頭だけで、後は映画を基準に時期が分かるようになっていた(例えば、モーハンラールやマンムーティ、クンチャーコー・ボーバン、バーヴァナらへの関連付け。テレビシリーズの「Shaktimaan」なんかも画面に現れていた)。しかし、時代考証という点では、リアルさよりイメージのほうを優先したようで、1999年当時にプージャーが携帯電話を持っていたというのは非現実的だし(2000年公開のタミル映画【Kushi】では、登場人物はまだ固定電話や公衆電話を使っている)、彼女が乗っていたバイクと被っていたヘルメットもあの当時にはなかったはずだ。
◆ 演技陣へのコメント
・ナスリヤ・ナシーム(プージャー役) ★★★★☆
とにかくナスナス(私が勝手に付けた愛称)の強みは、子役時代からずっとカメラの前に立ってきたせいか、若いのにカメラ怖じせず、フェイスエクスプレションもボディーランゲージもばっちり決められる点だ。本作でも上手かった。
(写真下:スクール時代のお転婆なプージャー。)
(写真下:すっかりお姉さんになったプージャー。)
まだ演技をしているというよりは「時分の花」で見せている感じだが、キャリアの初期(まだ19歳)に本作のプージャーのようなぴったりの役が当たるとは、運が良い。
これからまだまだ上手くなって、美人になって、女らしくなるはずで、私もよだれを垂らしながら応援する予定だったが、そんな時にファハド・ファーシルと婚約したというニュースが入り、しらけたなぁ。
ところで、本作のプージャーは勇ましくバイクに乗っていたが、、、
実はナスナスはバイクが運転できないようなのであった!
・ニヴィン・ポーリ(ギリ役) ★★★☆☆
運が良いといえば、この男はさらに運が良い。2012年の【Thattathin Marayathu】以来、毎年ヒット作が出ているのだが、彼自身が特に熱演・好演していたわけではなく、鑑賞後の印象度も低い。本作のヒットもナスリヤのおかげだと思うが、本人、自覚してるかなぁ?
ところで、彼は映画界入りする前はソフトウェア技術者としてバンガロールのインフォシス社で働いていたらしい。これは記憶に留めておきたい(監督のJude Anthany Josephもインフォシスで働いていたらしい)。
・ヴィニート・シュリーニワーサン(医学博士プラサード・ヴァルキー役)
ほとんどカメオ出演みたいなものだったが、彼ののっそりとした風貌はやっぱり空気を変えるなぁ。
(写真下:ヴィニート・シュリーニワーサンたるもの、伊達にビスケットは食わぬ。)
・ヴィナヤ・プラサード(レイチェル役) ★★★☆☆
プージャーにとってキューピッド的な役回り。ワインの開発に携わっているという設定が珍しい。素敵なオバサマだった。
・アジュ・ヴァルギース(デーヴィッド・カンジャニ役) ★★★☆☆
なかなか面白い。ニューウェーブには欠かせない顔になったかも。
・ラール・ジョース(ジェイコブ役)
この御仁がカメオ出演しているのには驚いた。そして、頭のテカリにも。
・ニッキ・ガルラーニ(テンナル役)
【1983】に続いて、こちらにもちらっと出演していた。
◆ テクニカル面・その他(覚書)
・音楽 : シャーン・ラフマーン ★★☆☆☆
音楽は、けっこう評判が良いようだが、あまり感銘は受けなかった。特にBGM(効果音)は好まない。
・撮影 : Vinod Illampally ★★★☆☆
・映画の冒頭にニヴィン・ポーリとアジュ・ヴァルギースが登場し、「禁煙キャンペーン」のパロディーをやっていた。映画本編と関係ないものだが、面白いアイデアだった。
◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆
◆ 鑑賞データ
・鑑賞日 : 3月22日(土),公開第7週目
・映画館 : Sandeep,11:30のショー
・満席率 : 1割以下(9人)











この記事へのコメント
よっぴい
Nazriya Nazimさんの役名がプーマのジャージーだか梨汁だかを想起させるのにクスッと笑ってしまいました。
YouTubeに最近のインタビュー番組出演時の映像が載っていましたが、瞳も手先もクルクルと、たいへん利発そうな女の子で、カーヴェリ川さんならずとも人を惹きつける、今が旬の女優さんって感じがします。年齢的にも幅のある役回りができそうですね。
南インド映画は(私のイメージでは)バイオレンスシーンが前面に出ていてオイオイ結局それかよ、って時も多々あるので、暴力抜きのカワイイ感じの映画が好きです。ディスクでリリースされたら是非見てみたいですね。
Nazriya Nazimで「ナスナス」ですか!そうするとタマンナは(以下略)
カーヴェリ
>たいへん利発そうな女の子で、カーヴェリ川さんならずとも人を惹きつける、今が旬の女優さんって感じがします。
はい、旬ですよねぇ。これからもっと良くなると思います。
>暴力抜きのカワイイ感じの映画が好きです。
なら、本作、ぜひご覧ください。
>そうするとタマンナは(以下略)
「珠ちゃん」という、きれいな漢字を用意していますよw