【Neru】 (Malayalam)

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【Neru】 (2023 : Malayalam)
題名の意味 : 真実
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : ドラマ
公 開 日 : 2023年12月21日(木)
上映時間 : 2時間32分

監督 : Jeethu Joseph
音楽 : Vishnu Shyam
撮影 : Satheesh Kurup
出演 : Mohanlal, Siddique, Priyamani, Anaswara Rajan, Jagadish, Santhi Mayadevi, Sankar Induchoodan, K.B. Ganesh Kumar, Haritha G. Nair, Sreedhanya, Mathew Varghese, Prashant Nair, Sabitta George, Resmi Anil, Kalesh Ramanand, Harikrishnan, Aditi Ravi, Dinesh Prabhakar, Krishna Prabha, Nandhu, 他

《 プロット 》
 ティルヴァナンタプラムのトゥンバに暮らす目の不自由な少女サラー(Anaswara Rajan)がレイプされる。彼女は優れた彫刻の腕前を持っていたため、触覚から得た情報を基にレイプ犯の顔を粘土で再現し、警察はその彫像からマイケル(Sankar Induchoodan)という男を逮捕する。マイケルはムンバイの裕福な実業家の息子だった。父のクリストファー・ジョーセフは息子への罰を歓迎したが、母(Sabitta George)が救ってやりたいと懇願したため、デリー在住の高名な弁護士ラージャシェーカル(Siddique)が呼ばれる。
 サラーの家族が示談の申し出を拒んだため、裁判となるが、検察官が間抜けな上に証拠が不十分だったため、マイケルはあっさり釈放される。だが原告側は諦めない。サラーの父モハンマド(Jagadish)はもっと優秀な検察官を雇いたいと希望するが、ラージャシェーカルの影響力を恐れて、名乗りを上げる弁護士はいなかった。と、アハーナ(Santhi Mayadevi)という弁護士が、かつての自分の上司だったヴィジャヤモーハン(Mohanlal)という弁護士を紹介する。ヴィジャヤモーハンはかつてラージャシェーカルの助手をしていたが、娘プールニマ(Priyamani)との関係を嫌ったラージャシェーカルが策を弄し、5年間の資格停止を食らわせていた。それでヴィジャヤモーハンは今やほとんど廃業状態だった。アハーナは躊躇するヴィジャヤモーハンをサラーに会わせ、話を聞かせる。ヴィジャヤモーハンはそれでもこの裁判に乗り気でなかったが、ニュースでのラージャシェーカルのインタビューを聞き、法廷に立つ決意をする。
 何度か裁判が開かれ、サラーの家の使用人シーマ(Resmi Anil)、サラーの母パルヴィーン(Sreedhanya)、父モハンマドが証人台に立つ。ラージャシェーカルは彼らに次々と厳しい質問を浴びせ、鍵は2つあり、シーマが施錠しても他に家に入れる人物がいること、サラーはモハンマドの実の娘ではなく、パルヴィーンの先夫の子であること、さらには彼らがマイケルの家族が裕福であることを知っていたことなどから、事件は原告側の作り話の可能性もあると示唆する。さらにサラーが証人台に立つと、ラージャシェーカルはレイプの際の反応について彼女に侮辱的な質問を浴びせかける。
 旗色の悪い原告側はSNSを使った作戦を決行する。これは功を奏し、世論がサラーに同情し、マイケルを糾弾し始める。そしてマイケルの婚約者もこの結婚を再考したいと言い出す。焦ったマイケルとその友人は直接サラーの両親に「告訴を取り下げろ」と脅迫する。だが、サラーの家族は屈しない。
 裁判で被告側は、レイプ後のサラーの診察に当たった医師と初期捜査に当たった警官ポール・ヴァルギース(K.B. Ganesh Kumar)を問いただす。その結果、精液などは発見されておらす、また初期捜査の資料も紛失し、証拠がない上、粘土の彫像も実際にサラーが作ったものかどうかも怪しくなる。
 さらに被告側は、マイケルは事件当時、4人の友人と一緒にリゾートホテルにいたというアリバイを持ち出す。ホテルの防犯カメラの動画が提出されるが、そこには確かにマイケルの姿が映っていた。ヴィジャヤモーハンは困惑するが、その動画をつぶさに吟味した結果、編集した跡があることを発見する。ジャヤモーハンと警官ポール・ヴァルギースがホテルのマネージャーを尋問した結果、マネージャーはラージャシェーカルに指示されてビデオを編集したと白状し、さらにラージャシェーカル自身が指示を出している動画も提出する。これで裁判は原告有利となり、ラージャシェーカルは弁護人から降りることになる。
 代わってラージャシェーカルの娘プールニマが被告の弁護人として法廷に立つ。彼女は事件当時のマイケルのスマホのシグナル追跡記録と運転手ロービン(Dinesh Prabhakar)の証言から、マイケルは確かに事件当時この町にはいなかったと結論付ける。だがジャヤモーハンは、マイケルと一緒にいたという4人の友人の証言が食い違っていることを暴き、また街路の防犯カメラの映像から、マイケルのアリバイ工作を完全に崩し去る。
 もはや誰の目にもマイケルの有罪は明らかだった。だが残念なことに、精液サンプルなどの物的証拠や目撃者が皆無だったことと、決め手となるべき粘土の彫像も本当にサラーが作ったとは実証されていなかった。そこで今度は、サラーが触覚から人の顔を正確に再現できるかどうか、法廷で彼女に実演させることになる、、。

・他の登場人物 : ジャヤモーハンの助手アシュワティ(Haritha G. Nair),裁判官(Mathew Varghese)

《 コメント 》
【Drishyam】(13)は、私が観たショーでは、終映時にスタンディングオベーションが起きたほどの名作で、【Drishyam 2】(21)共々私の好きな映画なのだが、そのジートゥ・ジョーセフ監督の新作【Neru】がまたまた評判が良く、ベンガルールでも快調に客を集めている。ちょっと観に行きづらい状況だったが、3週目にしてやっと劇場も空いてきたので、観て来た。

・なかなか緊張感のある本格的な法廷ドラマで、エンディングでは強く感動した。しかし、法廷もので2時間半のラニングタイムはちょっときつかった。

・それに、良い映画だったと言えるが、私的には不満点が2点あった。1点目はモーハンラール。もちろん、ラルさんのパフォーマンスに瑕瑾があったとは思わないが、【Drishyam】の父親ほどの力強い人物像ではなかった。負け犬の弁護士で、登場の仕方が「ワシはもうあきまへんねん」みたいな情けない感じだったが、当然そこから反転して、キレ者として大活躍すると期待したが、その反転度が少なかったかな。

・2点目はプリヤーマニの使われ方。下の画像を見ると、プリヤーマニが準主役のような働きをしてくれると期待もするが、そうでもなかった。シッディク演じる弁護士ラージャシェーカルの娘プールニマの役で、ラージャシェーカルが敵役なので、それに代わって法廷に立つというプールニマも敵役になってしまい、損な役回りだった。これまたプリヤーマニの演技に瑕瑾はなかったが、ファンが酔える役ではなかった。

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・映画の序盤に、ラージャシェーカルがマイケルの弁護を引き受けた後で、娘のプールニマがラージャシェーカルに「あんな男はぶっ殺すべきよ」と言うのだが、父は「我々は弁護士だということを忘れてはいけない」と言い、それに対してプールニマが「人間でもあるのよ」と返すシーンがある。そんなカッコいいことを言うからには、終盤でプールニマ発のどんでん返しがあると期待したのだが、それもなく、ただヴィジャヤモーハンに打ち負かされる弁護士で終わっていた。

・しかし、全体的に登場人物のパフォーマンスは良く、それが本作成功の理由になっていると思う。特筆したいのは3人。第一に挙げたいのはラージャシェーカル役のシッディク。いくら弁護士としてのプロ意識があるとは言え、ラージャシェーカルの嫌らしさには憤りを感じる。それを演じたシッディクの好演があったからこそ、レイプという犯罪とレイプ犯への憎悪が倍増されたと思う(上の画像の右)。

・次に挙げたいのは、何と言っても、レイプ被害者のサラーを演じたアナシュワラ・ラージャン。女性で、視覚障碍者で、一見ひ弱そうだが、すごく芯の強い性格をしていて、本作のメッセージを的確に体現している。難を言えば、可愛らしすぎるということだ(つまり、彼女の美貌がお涙ちょうだいの道具に使われた可能性がある)。

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・もう一人、アハーナを演じたシャーンティ・マーヤーデーヴィも挙げておきたい。ジャヤモーハンの助手として、献身的な活躍をする女性を演じている。良い役だったので、どうしてこれをプリヤーマニが演じなかったのか、ちょっと残念。

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・しかし、このシャーンティ・マーヤーデーヴィという人は面白そう。まず、本作の脚本はジートゥ・ジョーセフと共に彼女が担当している。長身スリムなモデル兼女優だが、実際に弁護士でもあるようだ。出演映画は、私は過去に【Drishyam 2】とタミル映画【Leo】(23)で見たが、本作も加えて、全て法曹界の人物の役だった。

・面白いと思ったのは、本作のレイプ被害者サラーが視覚障碍者と設定されていること。これは、視覚を失うことにより極度に発達した触覚で彫像を作り、それが事件解決に役立つというアイデアも見事だが、それより私は「正義の女神」のことを想起した。周知のとおり、インドでも裁判所には正義の女神像が置かれていることが多いが、この女神は天秤と剣を持ち、目には目隠しをしているという姿でデザインされている。つまり、目が見えないほうがより真実が見えるという意味だが、本作のサラーも目が見えないが、本当に真実(真犯人)を見ていたのは彼女だ、という意味が込められている、、、かどうかは知らないが、とにかく本作のポスターにも正義の女神像が使われている(下)。

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◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆

《 鑑賞データ 》
・鑑賞日 : 2024年1月6日(土),公開第3週目
・映画館 : Cinepolis (Lulu Mall),09:50のショー
・満席率 : 4割
・場内沸き度 : ★☆☆☆☆
・英語字幕 : あり

《 参考ページ 》
https://en.wikipedia.org/wiki/Neru_(film)
https://www.imdb.com/title/tt28358950/

 

この記事へのコメント

  • メタ坊

    川縁さんのプリヤちゃん愛にあふれたレポートでしたね。本人が知ったら喜ぶでしょう😃
    2024年01月10日 08:06
  • 川縁長者

    >メタ坊さん

    もしコンタクト取る機会がありましたら、よろしくお伝えください(^^
    2024年01月11日 20:57