【Blink】 (Kannada)

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【Blink】 (2024 : Kannada)
題名の意味 : まばたき
映倫認証 : U/A
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : SF/スリラー
公 開 日 : 3月8日(金)
上映時間 : 2時間23分

監督 : Srinidhi Bengaluru
音楽 : Prasanna Kumar MS
撮影 : Avinaasha Shastry
出演 : Dheekshith Shetty, Chaithra J. Achar, Mandara Battalahalli, Suresh Anagalli, Gopalkrishna Deshpande, Vajradheer Jain, Kiran Naik, 他

《 プロット 》
 2021年。アプールヴァ(Dheekshith Shetty)は演劇の分野で身を立てたいと望む青年。母ヤショーダを田舎に残し、ベンガルールで独り暮らしをしていた。父は彼の幼少期に行方不明となり、死亡したものとされていた。彼はまだ大学院の試験が残っていたため、定職には就かず、アルバイトをして小銭を得ていた。そのため、恋人で同じ劇団の女優スワプナ(Mandara Battalahalli)から経済的な援助を受けていた。また、この劇団のメンバーたちはある世捨て人のような老人に敬意を表していた。その老人はどこからともなく現れ、本を配布し、その代金は一切取らない代わりに、食事と寝床さえ提供してもらえればよしとしていた。
 ある日、アプールヴァの前に中年の男性(Suresh Anagalli)が現れ、「母のヤショーダは元気か、お前の父さんは死んでないよ」と告げるなり、姿を消す。謎の中年男はその後も何度か姿を現す。その頃からアプールヴァはもう一人の自分自身を目撃するようになり、怯える。
 1996年、ラーヤドゥルガ村。ゴーパール(Gopalkrishna Deshpande)は妻のヤショーダ、妹のデーヴァキ(Chaithra J. Achar)と三人で暮らしていた。子供はまだいなかった。ある日、ゴーパールの前にアリウ(Vajradheer Jain)という男が現れる。アリウはマイスールからやって来、書籍のセールスをしていると言う。ゴーパールはアリウを気に入り、彼を自宅に泊める。アリウとデーヴァキは、会うなり惹かれ合うものを感じる。ゴーパールは骨董のナイフやコインを集めるのが趣味で、アリウもそれに関心を示す。そこでデーヴァキはアリウをカーライヤ(Kiran Naik)という馴染みの骨董屋に連れて行く。だが、カーライヤはアリウがマイスール出身だと聞いて、正気を失う。実はカーライヤの娘レーヴァティが5年前にマイスールに行くと言ったまま消息不明になっていたからである。
 2021年のベンガルール。アプールヴァは謎の中年男に会いに行く。その男は自分のことをマイスール出身のアリウだと名乗る。そしてタイムトラベルの実験をしていると言い、アプールヴァにタイムトラベルができる装置一式を与える。特殊な時計で飛びたい日時をセットし、特殊な目薬を点眼すると、セットした日時に飛べるというものである。ただし、その旅はまばたきする間だけしか続かず、まばたきすると元の時間に戻ってしまう。ところが、アプールヴァは長時間まばたきをしないでも平気だという特殊能力を持っていた。アリウ(中年男)はアプールヴァに真実を知るべきだと言って、ゴーパールとヤショーダと男の子が写っている古い写真を渡す。
 アプールヴァは田舎の母に電話し、問い詰める。母はやむなく「お前の父はお前が5歳のときに橋の上で消息を絶った」と答える。アプールヴァは2001年の、父が失踪したという日にタイムトラベルすることにする、、。

《 コメント 》
・監督もスタッフも知られた名前ではなく、出演者も、渋い俳優が出ているとは言え、スター不在の映画ということで、ボックスオフィス的には地味なスタートを切った本作だが、公開後の評価が高く、スリーパーヒットの兆しを見せている。私としては、SFもスリラーも観たいムードじゃなかったので、脇に置いていたら、映画関係者からも推す声が相次ぎ、これは観ておこうと思った。で、観たら、なかなか面白かった。

・面白いと言っても、実はストーリーが複雑で、よく分からなかった。またまた「よく分からないのになぜか好き」な1本が誕生してしまった。タイムトラベルのSF映画はストーリーが複雑になるものだが、それにしても本作はヒネリが多すぎたように思う。終盤は観客から笑いが起きていたが、コメディーということではなく、「またヒネリか!」という呆れた笑いだった。先日の【Saramsha】と言い、カンナダ映画はなぜかくもややこしい映画を作りたがるのだろう?

・とは言うものの、なぜか惹かれる作品ではある。それはきっと本作が芸術的情熱にあふれているからだろう。「芸術」くさい映画は嫌いだが、本作には若いアーチストたちの「やってやろう!」という気概が感じられた。監督のシュリーニディ・ベンガルール(名前からしてナイス!)はおそらくまだ20代前半のお若い方。映画監督としてはこれがデビューとなるが、ずっと演劇畑で活動してきた人らしい。本作もソポクレスのギリシャ悲劇『オイディプス王』が重要なモチーフに使われていて、それも私の琴線に触れる点だった。

・ギリシャ悲劇という異郷の文化だけでなく、本作の登場人物であるゴーパール、ヤショーダ、デーヴァキという名前からも分かるとおり、クリシュナの神話も練り込まれている。その他、現代のカンナダ語文学や、映画(インド映画、外国映画問わず)などへの言及が散りばめられていて、なかなか刺激的。映像や音楽も面白く、シュリーニディ監督の能力の高さが窺える。

・例によって、縁あってもう一度観ることがあった場合のために、よく分からなかった点をメモしておく。まず、そもそも監督は本作で何を言いたかったのかがよく分からない。【Saramsha】や【Lucia】(13)のような作品だと、非現実的なストーリーに託してメッセージめいたものが語られていたが、本作はそれがよく見えなかった。もしかしてハラハラドキドキのSFスリラーを見せることだけが意図なのかもしれないが、本作の生真面目なムードからすると、それだけではなさそう。強いて言うと、運命とか、真実を知ってしまうことの皮肉とか、そうした世界にある謎な面を映画的に描いてみせたかったのかもしれない。あるいは、やはり父と子の関係が意識されているか?

・アリウ(Vajradheer Jain)の行っていたタイムトラベルにどこかで亀裂が生じたらしく、それでややこしいストーリー展開になるのだが(何せ言及されている年代も1991年、1996年、2001年、2021年、2025年、2030年代、2050年代と、これだけを行き来する)、その理屈がよく分からなかった。だから、なぜゴーパール(Gopalkrishna Deshpande)が自殺しようとしたのかも分からない。また、骨董屋カーライヤ(Kiran Naik)の娘レーヴァティ(地味に重要人物)がなぜ家出したのかも分からない。

・主人公アプールヴァを演じたのは、【Dia】(20)や【Dasara】(23)でお馴染みのディークシト・シェッティ。かなり熱演。彼の主演作では最近公開された【KTM】も評判が良く、徐々に努力が実を結んでいるようだ。

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・アプールヴァの恋人スワプナを演じたのはマンダーラ・バッタラハッリという人。全く知らない。映画中も存在感がいまいちなかったが、実は重要な役だった。

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・対して、芝居的に魅せていたのはデーヴァキ役のチャイトラ・J・アーチャールさん。【Sapta Sagaradaache Ello - Side B】(23)に続いてまたまた好演。
 (写真下: ミシンとの相性もばっちりだった。)

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・2021年のシーンでアリウと名乗る謎の中年男役を演じたのはスレーシュ・アーナガッリという人。最初、ラメーシュ・インディラかと思ったが、別人だった。この人も演劇界の人で、シュリーニディ・ベンガルール監督のメンターらしい。

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・1996年のアリウを演じたのはワジラディール・ジャインという人。この人についても全く知らない。察するに、やはり演劇界の人で、監督とつながりのある人だろう。

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・今回も地味ながら渋い役どころだったゴーパールクリシュナ・デーシュパーンデさん。

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《 オマケのひと言 》
・これまたメモ。アリウとデーヴァキが話題にするカンナダ語の小説は"Shikaari"、ゴーパールがアリウに語ったペルシャの詩人はルーミー

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

《 鑑賞データ 》
・鑑賞日 : 3月24日(日),公開第3週目
・映画館 : PVR (GT World),10:100のショー
・満席率 : 2割
・場内沸き度 : ★★☆☆☆
・英語字幕 : あり

《 参考ページ 》
https://en.wikipedia.org/wiki/Blink_(2024_film)
https://www.imdb.com/title/tt19874970/

 

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