【Ramana Avatara】 (Kannada)

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【Ramana Avatara】 (2024 : Kannada)
題名の意味 : ラーマの化身
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : コメディー
公 開 日 : 5月10日(金)
上映時間 : 2時間16分

監督 : Vikas Pampapathi
音楽 : Judah Sandhy
撮影 : Vishnu Prasad, Sameer Deshpande
出演 : Rishi, Pranitha Subhash, Arun Sagar, Shubra Aiyappa, Anirudh Acharya, Vikas Pampapathi, 他

《 プロット 》
 とある村に暮らす自称「ジェントル・ラーマ」ことラーマ(Rishi)はプールニ(Shubra Aiyappa)という女性に惚れていた。だがプールニはベンガルールでの就職が決まるなり、村を去ってしまう。そこでラーマは考えた、村に仕事の機会が増えれば、村人が都会に出ていくことはないだろうと。そのためにラーマは選挙に出馬し、政治家となって企業誘致などを行おうと思いつき、村の有力者のクリシュナに相談する。クリシュナはラーマへの協力を約束し、村人たちから基金を集める。だがその基金をラーマの友人のデザイン(Anirudh Acharya)が持ち去り、雲隠れしてしまう。激怒するクリシュナ。基金盗難の責任はラーマに負わされ、彼は村を去らざるを得なくなり、マンガルールのリゾートホテルで働く友人のヴィジの許に逃れる。
 ラーマはそのリゾートホテルで下働きすることになるが、ここに美しい女性(Pranitha Subhash)が宿泊客としてやって来る。ラーマは彼女の運転手をすることになる。彼女は何やらプロジェクトと称してビデオを回し、付近の住民に聴き取りをし、資料を集めていた。名前も住所も明かさず、ラーマには「あなたがラーマなら、私のことをシーターと呼んで」と言うだけだった。ラーマはシーターに惚れ、シーターもラーマにまんざらではないようだった。
 やがてシーターのプロジェクトも終わり、彼女が家に帰る朝となる。ラーマは彼女を帰してはなるものかと、彼女のバッグを隠す。資料を入れたバッグがなくては帰れないと、シーターはラーマと一緒にあちこち探しに行くが、その途上で彼女は何者かに誘拐されてしまう。テレビのニュースから、犯人はベンガルールにいるヤクザのアレクサンダル(Arun Sagar)とその一味だと思われた。アレクサンダルは連続女性誘拐事件の容疑を掛けられていたからである。ラーマは早速ベンガルールに赴く。
 ベンガルールでラーマは偶然デザインと再会する。ラーマは基金の件でデザインを難詰するが、彼がヤクザの世界にも繋がりがあり、アレクサンダルとも接近できそうだと分かると、彼を利用することにする。そしてある人物を介してアレクサンダルに接近し、誘拐することに成功する。アレクサンダルがシーターを解放しそうにないのは見えていた。なので、ラーマとデザインはひと芝居を打ち、アレクサンダルが謎のグループに襲撃されたところをラーマらが救出したことにする。ラーマはアレクサンダルに「あんたを襲った犯人を見つけてやるから、誘拐された俺の恋人を捜し出してほしい」と持ち掛ける。ラーマのことをすっかり気に入ったアレクサンダルはそれを受け入れる。
 ところが後に、シーターは実はラタという名前で、アレクサンダルがぞっこん惚れており、結婚する気でいる女だということが分かる。なお悪いことに、ラーマの捜しているのが他ならぬリタだということがアレクサンダルの耳に入ってしまう、、。

《 コメント 》
・アイデアは面白いし、ストーリーもそこそこ面白かったが、全体的には失敗作、って感じの映画だった。監督のヴィカース・パンパーパティという人はこれがデビュー作らしく、どのような経歴の人かも知らないが、映画の作り方があまり分かっていない人のように見えた。

・こういう敵役のところに潜入し、目的を遂げようというコメディーは、例えばテルグ映画界のシュリーヌ・ヴァイトラ監督の作品を連想させるが、それにははるかに及ばない。そのシュリーヌ監督さえ、近ごろでは振るわなくなっているぐらいだから、もっと質の高いコメディーを作らないと、今の目の肥えた観客は満足しないだろう。

・題名から(またはトレイラーやポスターから)分かるとおり、『ラーマーヤナ』の枠組みを借りている。しかしこれは「分かるかなぁ、分からないかなぁ」といった微妙な翻案の仕方ではなく、もう露骨に物語中でも「ラーマーヤナです」と言っているようなものだった。それはいいとしても、特に『ラーマーヤナ』の大きさや気高さが反映されているわけではなく、ただただ「ラーマ」という名の男が誘拐された「シーター」という名の女を奪還しに行くだけの、上っ面だけ借りたコメディーになっている。それではダメだろう。いかにインドがヒンドゥー化している時代だといっても、「ラーマーヤナ」と言えば観客が喜ぶ時代ではないことは【Adipurush】(23)で証明済み。

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・ただ、何点か評価したい点はあった。1つは、村落部の人々が仕事を求めて大都市に流出する問題が扱われていたこと。これは先日紹介した【Karataka Damanaka】でも扱われており、インドにとっては切実な問題。

・2つ目は、ベンガルールでのガンジャを合法化しようというキャンペーンを茶化していたこと。これは「緑を守ろう」という運動に見せかけた似非キャンペーンで、私は直に見たことはないが、きっとこういうことがベンガルールで行われているのだろう(ガンジャ合法化の是非はさて置き)。

・3つ目は、ネタバレになってしまうが、本作ではヒーローのラーマとヒロインのシーター(リタ)が晴れて結ばれるというハッピーエンドではなく、最後にシーターが「ヤクザと政治家は嫌い」と言ってラーマから逃げてしまうこと。ハッピーエンドでないのが良いと言いたいわけではなく、政治家というのは畢竟ヤクザと似通ったものだ、という視点が面白かった。

・主人公ラーマ役のリシは良い。このぷっと笑ってしまうハンサム顔は人類に幸福をもたらす、ぐらいに私は思っているので、監督の皆さん、もっと有効活用してください。

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・シーター(リタ)役のプラニーター・スバーシュは、ものすごく久しぶりに見た。【Porki】(10)でデビューしたのが14年前で、もう31歳になったようだ。あまり好きでもない女優だったが、今回久々に見て、けっこう可愛いじゃん、と思った。

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・コミカルなギャングのボス、アレクサンダルを演じたのはアルン・サーガル。なかなか面白く演じていたが、マラヤーラム映画【Aavesham】のファハド・ファーシルを見た後では、見劣りすると思った。

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・村でのラーマの憧れの人、プールニを演じたのはシュブラ・アイヤッパという人。全然知らない人だと思ったが、【Vajrakaya】(15)で見ていたようだ(あちらでも出番は短かったが)。おそらく本職はモデルのほうで、女優としては何もできないように見えた。

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・ときどき見かけるが、名前の知らなかったこの人(デザイン役)がアニルド・アーチャーリヤという名前だと分かった。本作では後半で活躍していた。

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《 オマケのひと言 》
・悪役アレクサンダルは笑うに笑えないオヤジギャグを連発するキャラクターだったが、その一例は「ラーヴァナがシーターを誘拐するときに使った車は何か?」、「答え、i20」、「つまり、ラーヴァナは頭が10あるので、目は20(eye 20 = i20)」というもので、思わず笑っちゃった。ちなみに「i20」はヒョンデ自動車がインドで販売している車の名前。

◆ 完成度 : ★★☆☆☆
◆ 満足度 : ★★☆☆☆
◆ 必見度 : ★★☆☆☆

《 鑑賞データ 》
・鑑賞日 : 5月12日(日),公開第1週目
・映画館 : Gopalan Cinemas (Arcade Mall),10:15のショー
・場内沸き度 : ★☆☆☆☆
・英語字幕 : あり

《 参考ページ 》
https://en.wikipedia.org/wiki/Ramana_Avatara
https://www.imdb.com/title/tt27369527/

 

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