【Brat】 (2025 : Kannada)
題名の意味 : 悪ガキ
映倫認証 : UA16+
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : クライム/ドラマ
公 開 日 : 10月31日(金)
上映時間 : 2時間35分
監督 : Shashank
音楽 : Arjun Janya
撮影 : Abhilash Kalathi
出演 : Darling Krishna, Manisha Kandakur, Achyuth Kumar, Ramesh Indira, Dragon Manju, Manasi Sudheer, Srivatsa Shyam, Tejus Venkatesh, Naveen Shankar(特別出演), 他
《 プロット 》
巡査のマハーデワイヤ(Achyuth Kumar)は正義と道徳を愛する謹厳な警官。ところが一人息子のクリシュナは悪ガキで、子供のころからギャンブルに馴染んでいた。しかしクリシュナは祖母に諭され、ギャンブルはすっかり止め、クリケットに専念することにする。彼は優秀なクリケット選手になるが、父に「クリケットで100点取るよりも、学校の試験で100点取るほうが人生の役に立つ」と言われる。果たしてクリシュナは大学の試験に合格できず、フードデリバリーやバイクタクシーのアルバイトをすることになる。
ところがある日、クリシュナ(Darling Krishna)は高級車に乗せられた犬を見、やはりお金のない生活は犬にも劣ると悟り、再び悪ガキ道を歩む決意をする。そして自ら「クリスティ」と名乗る。彼は友人らと賭けクリケットでひと儲けしようと、バーブという男の運営するノミ屋を利用する。頭の切れるクリシュナは、自身のクリケット選手としての経験と鋭い読みで次々と賭けに勝ち、けっこうな現金を手にする。そんな時にクリシュナはマニシャー(Manisha Kandakur)という女性と出会う。彼はマニシャーから取り上げた5百ルピーを元に賭けに勝ち、5千ルピーにして彼女に返す。二人の間に愛が芽生えるが、クリシュナはマニシャーに自分は投資アドバイザーだと偽る。
クリシュナは部屋を借り、事務所を構える。彼はさらに大口の賭けでひと山当てようと、母のレーヌカー(Manasi Sudheer)や友人たち、そしてマニシャーからも現金を集める。そして大一番の賭けクリケットをするが、またしても勝ち、350万ルピーの元金が1225万ルピーに膨れ上がる。
ところが翌日、バーブのノミ屋は跡形もなく消えていた。クリシュナと友人たちはやっとのことでバーブを捜し出すが、彼はあのノミ屋の背後にはクリケット賭博の大物ヤクザ、ダラー・マニ(Dragon Manju)が控えており、お金の行方は分からないと告げる。クリシュナらはバーブを連れてマニのアジトへ行き、せめて元金の350万ルピーだけでも返してくれと懇願するが、相手にされず、バーブも殺される。マニは悪徳警部のラヴィクマール(Ramesh Indira)とつるんでおり、さらに悪いことに、ラヴィクマールはクリシュナの父マハーデワイヤの上官だった。
クリシュナの友人の一人が、彼に預けた大金を失ったことで家族が酷い目に遭い、それを苦にして自殺してしまう。マニシャーも借金取りに追われる羽目になり、クリシュナを非難する。クリシュナはマニの経営する賭けスポーツバーに乗り込み、大暴れするが、そこへ父マハーデワイヤら警官がやって来、彼は逮捕される。警部ラヴィクマールはクリシュナを拷問に掛けようとするが、クリシュナは慌てず、ラヴィクマールに自分に投資すれば何倍にもして返す、と話を持ち掛ける。ラヴィクマールはその話に乗り、クリシュナを釈放する。ラヴィクマールはその元金を調達しようと早速マニに依頼するが、逆にマニにさんざん侮辱される。
これに憤ったラヴィクマールは、クリシュナと組んで、マニを陥れる作戦を立てる。彼らはラヴィクマールの権力を利用してマニの違法スポーツバーを閉鎖に追い込む。その一部始終を見ていた父マハーデワイヤは警視総監に対策を講じるよう書簡を送る。それを受けて、CBI捜査官が覆面で動き出す。
マニは反撃に出、クリシュナを映画館で襲い、娘をネタにラヴィクマールを脅迫する。だがクリシュナらは慌てない。スデーヴ・ゴースワーミという人気クリケット選手がいたが、そのマネージャーのマンジートという男が実はクリシュナの友人だった。クリシュナはマンジートを通して、スデーヴに八百長試合をしてもらう話をつける。そしてマニをこの試合の賭博に巻き込み、罠にはめようという作戦を立てる。クリシュナとラヴィクマールはマニに会い、ビデオコールでマンジートやスデーヴと話し、すっかりマニを信じさせる。
マハーデワイヤはクリシュナがラヴィクマールやマニと接近しているのを知り、ある夜、彼を追跡し、拘束しようとする。だが、そこへCBI捜査官のキショール・ガーイクワードが現れ、マハーデワイヤを制止し、「確固たる証拠を集めるまでは動くな」と諫める。
そうした折に、クリシュナとマニシャーの婚約がまとまる。そして婚約式にはラヴィクマールやマニも来るが、他方、CBI捜査官らも身分を隠して出席する。捜査官らはクリシュナの部屋に隠しカメラを設置し、またマハーデワイヤはGPS発信機の内蔵された腕時計をクリシュナに贈る。
クリシュナの仕組んだ八百長賭け試合は2億ルピーの元金が100億ルピーになるというもので、国際的なマフィアも絡んでいるようだった。作戦は実行に移されるが、彼らの動きはCBI捜査官とマハーデワイヤに筒抜けだった、、。
《 コメント 》
・シャシャーンク監督の新作が公開されたので、観て来た。シャシャーンク監督は、汎インド的な称賛を浴びるほどの大監督ではないが、カンナダ映画界では堅実な作品を発表し続け、ヒット作も多い。私もなぜかこの御仁の作品とは肌が合い、好きな監督の一人としている。主演は【Love Mocktail】(20)で知られたクリシュナ。シャシャーンク監督とクリシュナとは【Kousalya Supraja Rama】(23)でもタッグを組み、同作品をヒットさせた。縁起のいいコンビだと言える。
・トレイラーを見る限り、本作はアクション映画だと予想された。シャシャーンク監督もクリシュナもロマンス系の映画に強いと思われるが、シャシャーンク監督は【Bachchan】(13)でアクション映画にも旨みを見せたし、クリシュナもあの体格とマスクなら強面ヒーローも問題ないだろう。私的に期待の1作だった。
・ところが、公開後の評価はそれほど芳しくなく、興行的にもヒットしそうな気配がしない。さっとレビューに目を通したところ、どうも内容や語り口に新鮮さがないということらしい。これはシャシャーンク監督自身が脚本を書いていないということが一因かもしれない(シャシャーンク監督のヒット作はほぼ同監督が脚本も手掛けている)。しかし、そんな他人の評価はさて置き、私は面白く鑑賞できたし、ユニークな映画だとも思った。
・本作のユニークさを述べる前に、まず題名の「Brat」の意味を吟味しておく。これは普通「やんちゃ坊主」、「悪ガキ」、「生意気者」といったネガティブな性格を表す言葉だが、最近では流行語としてポジティブな意味でも使われているらしい(こちら)。非常識と思われることでも、自分の信念・ライフスタイルとして、誇りをもって行う人といった意味だろうか。きっと本作の製作チームはこの流行語としてのポジティブな意味を意識して、自らを「ブラット」と称する主人公クリシュナを創作したのだろうと思う。
・本作の冒頭でクリシュナ(Darling Krishna)は「人生を思いどおりにしたいなら、リスクを負わなければならない」と語っているが、つまり「リスクを負ってでも、人生を思いどおりにしたい」という欲望がブラット的な生き方ということだろう。
・そこで本作のユニークさだが、本作ではお金を稼ぎたいという欲望が必ずしも否定的に捉えられていないということだ。これは共感できる。20世紀のインド映画なら、主人公はたいていローワーまたはローワーミドルクラスの若者で、これが富を蓄えた悪徳実業家やマフィアを打ち負かし、最終的に貧者の正義を守るという内容が多かった。ところが、最近のインドはミドルクラス/アッパーミドルクラスの経済的成長が著しく、昔ふうの貧者の正義や清貧の徳といったものは大衆にアピールしにくくなっている。誰でもお金を稼げるし、お金を稼ごうと意志するのが当たり前の時代となっている。インド映画もそんな風潮にマッチしたヒーロー像を見せる必要があるだろう。その一例がブラット的に生きる本作の主人公クリシュナだろう。
・上のあらすじで分かるとおり、本作はクリケット賭博がテーマとなっており、それを代表する悪の存在が賭博マフィアのマニ(Dragon Manju)と悪徳警官のラヴィクマール(Ramesh Indira)ということになる。ところが、ふた昔前の映画ならそれに対抗するのが貧しいミドルクラスのヒーローという、二項対立の図式になっていたが、本作ではそのミドルクラスの中で「ブラット」クリシュナとその父マハーデワイヤ(Achyuth Kumar)が対立するという、鼎立みたいな関係になっているのである。クリシュナは子供のころから価値観の相違から父マハーデワイヤと対立していたが、長じてクリケット賭博に足を踏み入れてからは、マフィアのマニと対立するようになり、それをラヴィクマールがサポートする。ところが、謹厳な警官として悪が赦せないマハーデワイヤはこの三者諸共と対抗するという、複雑な構造になっている。
・つまり、「ブラット」クリシュナの中間的なグレーなキャラクターがミソになっているわけだが、これを新興的なミドルクラスの象徴、片やマハーデワイヤを「清貧の徳」を重んじる伝統的なミドルクラスの象徴として見ると、この映画はなかなか面白いのではないだろうか。
・ちなみに、賭けクリケット(賭けスポーツ)は、カルナータカ州では違法扱いされていると見ていいが、法整備が進んでおらず、完全に違法とも言えないグレーな部分もあるようだ。
・クリシュナ役のクリシュナ(ダーリン・クリシュナとは呼びたくない)は、私は高く評価しており、それなりに順調なキャリアも歩んでいるが、スター俳優として突出するには至っていない。しかし、この人は映画関係者の二世三世ということではない、平民?上がりの俳優として、私はスディープやヤシュの後を追うスターになってほしいと思っている。実際にクリケット選手だったらしく、本作のクリケット絡みのシーンでいろいろと指導したということだ。
・マハーデワイヤ役のアチユトさんは、はまり役だろう。ヴィジュアル的に面白いわけではないが、制服姿のスチルを貼っておく。
・悪役の二人、ラヴィクマール役のラメーシュ・インディラ(写真下・左)はさすがに的確な芝居をしているし、マニ役のドラゴン・マンジュ(初めて見たかも)もなかなか良いツラ構えだった(同・右)。
・ところで、このマニは英語を習っており、下手な英語を使いまくるという設定だったが、これがコメディーポイントになっていた。しかも、なぜ彼が英語を話したがるのかという説明が一切なかったのが良かった。(写真下は英語教師役の人。)
・ヒロインのマニシャーを演じたのはマニシャー・カンダクールという人。なかなかコメントしづらい女優だ。本作のプロデューサーがマンジュナート・カンダクールという人なので、もしかしたらその身内なのかもしれない。映画デビューだと思っていたが、【Bhale Unnade】(24)というテルグ映画に出演しているようだ。
(写真下: 本作のスチルではありません。)
・どうもこの【Brat】はシリーズ化したいようで、エンディングでナヴィーン・シャンカルがカメオ出演し、続編を匂わせていた。
《 オマケのひと言 》
・クリケットのバッティングの技法で、ボールを掬い上げるように打ち、守備の手薄な後方に飛ばして、バウンダリーを狙うというものがあるが、映画中でそれは「サブマリン・ショット」と呼ばれていた。へ~、そうなんだ、と思ったが、それは本作限定の呼び方で、実はあれは「スクープ・ショット」というらしい。
◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆
《 鑑賞データ 》
・鑑賞日 : 11月2日(日),公開第1週目
・映画館 : Cinepolis (Lulu Mall),13:00のショー
・満席率 : 3割
・場内沸き度 : ★★★☆☆
・英語字幕 : あり
《 参考ページ 》
・https://en.wikipedia.org/wiki/Brat_(2025_film)
・https://www.imdb.com/title/tt35064377/
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