【Aan Paavam Pollathathu】 (Tamil)

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【Aan Paavam Pollathathu】 (2025 : Tamil)
題名の意味 : 男に対する罪は危険である
映倫認証 : UA13+
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : コメディー/ドラマ
公 開 日 : 10月31日(金)
上映時間 : 2時間2分

監督 : Kalaiarasan Thangavel
音楽 : Siddhu Kumar
撮影 : Madhesh Manickam
出演 : Rio Raj, Malavika Manoj, RJ Vigneshkanth, Sheela Rajkumar, Jenson Dhivakar, Raja Rani Pandiyan, Uma Ramachandran, A. Venkatesh, Reshmi Karthikeyan, Anjali Ameer, Anupama Kumar, Deepa Shankar, Elango Kumanan, Vstar Vinoth, Aniruth, Vasanthi, Senthi Kumari, 他

《 プロット 》
 チェンナイ在住のIT企業に勤めるシヴァ(Rio Raj)は、コインバトール在住のシャクティ(Malavika Manoj)と見合いをし、お互いに「男女平等」を尊重する考えに共鳴し、結婚する。だか、二人の蜜月は4か月ほどしか続かず、400日後にはシヴァはもう離婚を考え、ナーラーヤナン(RJ Vigneshkanth)という弁護士に相談に行く。シヴァの陳述によると、まずシャクティは結婚4か月後に結婚の紐帯であるターリをあっさり外したと言うのだ。次にシヴァが仕事から帰って来、ベルを鳴らしてもドアを開けず、夕食もろくに作らず、リール動画の撮影に熱中するようになったと言うのだ。シヴァが文句を言うと、シャクティは勝手にメイド(Deepa Shankar)を雇う有様。さらにシヴァの身内で儀式が行われた際、シャクティは会場にノースリーブのブラウス姿で現れ、脚組みして椅子に座っていた。それを年長者たちが咎めたため、シヴァはシャクティに注意するが、彼女は憤り、「これは私の選択だ」と言って、会場を出て行ってしまう。後日、シャクティの友人がブティックをオープンした際に、シヴァはセレモニーにルンギ姿で現れ、「これは私の選択だ」と言って、シャクティに恥をかかせる。極めつけは、シャクティが大学時代の友人ラーケーシュと美容院を始めたいと言った際に、シヴァは激しく反対する。二人の間で口論となり、シヴァはシャクティに「自分では知的で進歩的だと言うが、お前は全然知的じゃない!」と侮辱する。シャクティはショックで泣き崩れ、実は妊娠していたのであるが、そのまま流産してしまう。シヴァは激しく悔いるが、悪いことに、シャクティは病院を抜け出し、家出してしまう。
 シャクティはラクシュミ(Sheela Rajkumar)という女性弁護士の家に保護されていた。シヴァはシャクティを連れ戻そうとするが、ラクシュミに追い返される。ラクシュミはシヴァを妻シャクティに対する家庭内暴力で警察に訴えようとしていた。しかしここは弁護士ナーラーヤナンと助手の弁護士シッドゥ(Jenson Dhivakar)の機転で切り抜ける。
 ラクシュミは実はナーラーヤナンの元妻だった。二人は離婚し、ナーラーヤナンはラクシュミに対して暴言を吐いた廉で弁護士の資格も一時停止となっていた。娘のディヤーはラクシュミの姉妹の許に預けられ、ナーラーヤナンとは一切連絡が取れないようになっていた。ナーラーヤナンの弁護士資格停止はちょうど明けたばかりで、彼は正式にシヴァの弁護を引き受ける。
 しかしラクシュミも、シャクティを護るというよりも、ナーラーヤナンに対する個人的ライバル意識から、猛烈な作戦を展開する。ラクシュミ陣営は法廷でシヴァの暴力がシャクティの流産の原因だとか、シヴァはアル中であるとか、精神疾患があるとか、でっち上げる。さらに、関係のない女性を雇って、シヴァと不倫していたと偽証をさせようとする。それを察知したナーラーヤナン陣営は、シヴァをわざと裁判官の車にぶつからせ、彼を入院させて、審議を遅らせる作戦を取る。
 だが、裁判では二人の離婚を認める方向に進む。ナーラーヤナンは、シヴァの収入と資産がシャクティに流れるのを阻止するため、法的なトリックを使う。
 その後、シャクティとラクシュミは有名なフェミニストのバーラティ(Anupama Kumar)に意見を聞きに行く。しかし、シャクティはバーラティがフェミニストでありながら、見事に家事をこなし、夫と平和に暮らしているのを目撃し、心に変化を感じる。他方シヴァも、メイドとの会話から、自分がいかに女性の立場になって考える意識が低かったかを悟る。
 さて、引き続き裁判が続けられるが、この件には新たな裁判官としてトランスジェンダーのアラメルマンガイ(Anjali Ameer)が就任する、、。

・他の登場人物 : シヴァの父(Raja Rani Pandiyan),シヴァの母(Uma Ramachandran),シヴァの弟(Aniruth),シャクティの父(A. Venkatesh),シャクティの母(Reshmi Karthikeyan),女警部(Vasanthi),女巡査(Senthi Kumari),裁判官(Elango Kumanan),探偵(Vstar Vinoth)

《 コメント 》
・この週末は興味深そうな映画がいくつかあったが、どれも決め手を欠いたので、公開3週目を迎えたこのタミル映画の小品を選んだ。離婚の危機に直面している若夫婦のドラマのようで、インドの若い世代のこの辺の意識も気になっていたからだ。新人監督、スター不在の映画ながら、アウェーのベンガルールで3週目ということは、それなりに面白いのだろう。

・果たして、面白かった。観る前は、男性中心のインド社会の中で生きづらさを感じた妻のほうが、遂には離婚を望むという話、つまり、マラヤーラム映画【The Great Indian Kitchen】(21)のような内容を予想したが、さにあらず、浅薄なフェミニズムの考えを振りかざす妻に夫が辟易する物語だった。これがコメディータッチで、深刻にならず、良い線でまとめている。

・まず、シヴァ(Rio Raj)とシャクティ(Malavika Manoj)のお見合いでの出会いが面白い。シャクティがコーヒーを持って登場し、そのまま突っ立っていると(普通、勧められるまでは座らない)、例によってシヴァ側の家族から座ってくださいと勧められる。その時シャクティはソファーに座らず、床に座る。これなどはインドの伝統に対する当てこすりではないか? そして、それを見たシヴァが、自分も平等にと、ソファーから床に座り直す。これでお互いに進歩的だと意気投合した二人は結婚し、同じように煙草を吸い、酒も飲む。

・ただ、ここまでは調子が良かったのだが、二人の進歩主義・フェミニズムは浅薄なもので、すぐに鍍金が剥げる。シャクティは自分の都合の良いようにフェミニズムを解釈し、シヴァをイラつかせる。我慢できなくなったシヴァはシャクティを「G・U・ポープ」と「カール・マルクス」の区別もつかない、またはアンベードカルの生誕地を「ポールバンダル」だと言ってしまう(実際にはマハートマー・ガーンディーの生誕地)ほどのバカだと侮辱し、「知的で自立している」と称しながら、結局は「俺の金で生活しているじゃないか!」と難詰する。そのショックでシャクティは流産してしまう。

・かと言って、この映画はシヴァ(男性)の側に立つ話かと言うと、そうでもない。シヴァは自分が思っている以上に保守的なインド男子であり、仕事から帰ってドアベルを鳴らすと、何の疑いもなく、妻がドアを開けてくれ、夕飯の用意ができているものだと思い込んでいる。後に、その思い込みがすなわちインドの男性中心社会の偏見だと、メイドの話から気付かされる。

・実際、最近のインドのミドルアッパークラスの教養層には、シヴァやシャクティのような生半可な進歩人が増えているのだろう。【Thalaivan Thalaivii】(25)も同じように夫婦の離婚の危機を扱っていたが、視点がずいぶん違っていて、本作のほうがより今日的状況を捉えていると思った。

・本作はシヴァとシャクティの物語だけでなく、それと並行して、ナーラーヤナンとラクシュミの弁護士「元」夫妻の物語も重要だった。あと、シヴァの両親もシャクティの両親もド保守的(つまり、普通の)インドの実年世代だと絵に描いたように描かれていた。

・結論的には、フェミニズムというのは夫婦を分断させる思想であってはならず、夫婦というのはお互いにエゴを少し引っ込め、相手の過ちも責めずに赦す姿勢が必要だと、意外に保守的なものになっていたと思う。ただ、伝統というのは時には足枷にもなるが、長年涵養されてきた知恵というのも多く含まれ、それは付け焼刃の教養には太刀打ちできない安定感と安心感があるには違いなく、この安心感を描き出したところに本作の成功の理由があると思った。

・上の考え方をサイドから補強するものとして、シヴァージ・ガネーサンとサーヴィトリ主演の古いタミル映画【Thiruvilaiyadal】(シヴァ神とその妻シャクティの物語)が冒頭と結末で引用されていた。

・シヴァ役のリヨー・ラージは、私は初めて見たが、主にビデオジョッキーとして、またはテレビドラマの俳優として活躍しており、けっこう人気は高いようだ。本作では初婚男子の役だったが、実年齢は30代の中盤で、俳優としてはベテランの域に入るだろう。全く問題のない芝居をしていた。
 (写真下: リヨー・ラージとシャクティ役のマーラヴィカー・マノージ。)

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・シャクティ役のマーラヴィカー・マノージも初めて見た。詳細は知らない。可愛い感じで、芝居もまずまずだったと思うが、役柄的に反感を覚えた鑑賞者(主に男性や年長者)もいたかもしれない。「It's my choice!」という台詞が耳に残る。

・弁護士ナーラーヤナン役のヴィグネーシュカーントはラジオジョッキー上がりで、やはりテレビドラマなどで活躍していた人のようだ。個性的な風貌で、コメディー的役回りかと思っていたら、最後は重要な役回りを担っていた。
 (写真下: 左がヴィグネーシュカーント、右はシーラー・ラージクマール。)

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・対して、ヴィグネーシュカーントの元妻で、弁護士ラクシュミを演じたシーラー・ラージクマールは、【Kumbalangi Nights】(19)や【Jigarthanda Double X】(23)でも見たお馴染みの顔。顧客の弁護(というより、私怨?)のためなら手段を選ばぬ鋭い(怖い?)女弁護士をしっかり演じていた。

・後半は法廷ものとなり、重くなりそうな展開を救ったのが、ナーラーヤナンの助手シッドゥ。演じたのはジェンソン・ディワーカルという人。なかなか良いコメディーセンスを見せていた。

・最後にトランスジェンダーの裁判官アラメルマンガイ役として登場したのはアンジャリ・アミール。彼女(?)は実際にトランスジェンダー。この裁判官の性をトランスジェンダーにしたのは明確な意図があってのことと思われるが、そう言えば、【Peranbu】(19)でも彼女のジェンダーが効果的に使われていた。

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・大きな役ではなかったが、【Thalaivan Thalaivii】で注目されたディーパー・シャンカルがメイド役で出演している。それと、これまた小さい役だが、【Vikram】(22)で話題となったヴァサンティおばさんが女警部役で出ていた。

《 オマケのひと言 》
・よく聞く話だが、最近のインドでは離婚訴訟のような男女間の問題が起きた場合、法律は「女性に有利に働く」というのが本作でも何度か語られていた。

◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆

《 鑑賞データ 》
・鑑賞日 : 11月15日(土),公開第3週目
・映画館 : Cinepolis (Lulu Mall),10:15のショー
・満席率 : 2割
・場内沸き度 : ★☆☆☆☆
・英語字幕 : あり

《 参考ページ 》
https://en.wikipedia.org/wiki/Aan_Paavam_Pollathathu
https://www.imdb.com/title/tt32284122/

 

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