【Kaantha】 (2025 : Tamil)
題名の意味 : (物語中で制作している映画の題名。)
映倫認証 : UA13+
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : スリラー/ドラマ
公 開 日 : 11月14日(金)
上映時間 : 2時間43分
監督 : Selvamani Selvaraj
音楽 : Jhanu Chanthar, Jakes Bejoy
撮影 : Dani Sanchez-Lopez
出演 : Dulquer Salmaan, Samuthirakani, Bhagyashri Borse, Rana Daggubati, Ravindra Vijay, Gayathrie Shankar, Nizhalgal Ravi, Bijesh Nagesh, Vaiyapuri, Bagavathi Perumal, Tamizhselvi, 他
《 プロット 》
1950年代のマドラス。映画撮影所「モダンスタジオ」のオーナー兼プロデューサーのマールティン(Ravindra Vijay)は、著名な映画監督のアイヤー(Samuthirakani)を呼び出し、数年前に同監督が撮ろうとし、お蔵入りしていた『シャーンティ』という映画のメガホンを取るよう依頼する。ただし条件が一つ、主役に大スターのT・K・マハーデーヴァン(Dulquer Salmaan)を使うということだった。しかし、そもそもこの企画はアイヤーとマハーデーヴァンの意見の相違でボツとなったものだった。マハーデーヴァンはアイヤーが見出し、育て上げた俳優だった。だがスター街道を駆け上がるにつれ、マハーデーヴァンは傲慢になり、監督本位の芸術的な映画を撮りたいアイヤーと、大衆的な人気を目指すマハーデーヴァンとの間で確執が起きていた。『シャーンター』はタミル映画界初のホラー映画であり、アイヤー自身の母親から想を得た、アイヤーにとっては思い入れのある企画だった。アイヤーはマハーデーヴァンの起用に難色を示すが、マールティンに押し切られ、企画がスタートする。ヒロインにはこれまたアイヤーが見出した秘蔵っ子のクマーリ(Bhagyashri Borse)が起用される。クマーリはビルマからの難民で、孤児だった。
撮影の初日、撮影所入りしたマハーデーヴァンは早速ストーリーとクライマックスを変更し、映画の題名も『カーンター』に変えると宣言する。これは監督アイヤーにとって侮辱以外の何物でもなかったが、とにかく撮影が始まる。マハーデーヴァンはアイヤーに代わってスタッフにいろいろ指示を与え、ヒロインのクマーリにも指示を出す。だが、アイヤーに忠実なクマーリはむしろマハーデーヴァンに反抗的な態度を取る。そして重要なシーンの撮影でクマーリはマハーデーヴァンの顔にビンタを食らわしてしまう。その夜、クマーリはマハーデーヴァンに謝罪する。マハーデーヴァンはクマーリをあるセレモニーに連れて行き、会場で歌を歌う。それを聴いてクマーリは心揺さぶられる。
その後も、撮影所ではアイヤーとマハーデーヴァン、そしてクマーリの間で緊張した関係が続き、撮影はスリリングな形で進む。そんな中で、クマーリは次第にマハーデーヴァンに惹かれるようになり、マハーデーヴァンもクマーリを愛するようになる。もちろんアイヤーはそれを快く思わない。実はマハーデーヴァンは大実業家シヴァリンガム(Nizhalgal Ravi)の令嬢デーヴィ(Gayathrie Shankar)と結婚していた。にもかかわらず、マハーデーヴァンとクマーリは逢瀬を重ねるようになる。そして、その様子をある人物がカメラに収めていた。マハーデーヴァンは義父シヴァリンガムからその写真を見せ付けられる。
そんな問題がありながらも、撮影は最終日となる。だが、その日は撮影所にマハーデーヴァンの妻デーヴィも現れ、不穏な空気が流れる。そして、クライマックスの撮影で登場人物の撃った拳銃に本物の弾丸が込められており、危うく死亡事故が起きるところだった。撮影はここで中止となる。撮影後、マハーデーヴァンはクマーリに、ティルパティに行って結婚しようと告げる。
その夜、スタジオ内で2発の銃声が響き、ある人物が射殺される。この殺人事件の捜査はフェニックス警部(Rana Daggubati)が担当する、、。
・他の登場人物 : 助監督バーブ(Bijesh Nagesh),マハーデーヴァンの運転手セルワム(Vaiyapuri),クマーリの付き人ラーニー(Tamizhselvi),巡査カートゥ(Bagavathi Perumal)
《 コメント 》
・射殺されたのは誰か、誰が殺したのか、その理由は何か、、、は観てのお楽しみ! 私はあまりネタバレには配慮せず、書いてしまうほうだが、本作ではいろいろ秘しておきたい。
・上のあらすじは前半までで、後半はいよいよラーナー・ダッグバーティ演じるフェニックス警部が登場し、捜査するという、ミステリータッチのうねうねした展開となるのだが、今思い返してみると、それほど複雑なストーリーでもなかった。実は前半もアイヤー(Samuthirakani)とマハーデーヴァン(Dulquer Salmaan)の愛憎ドラマ、この男二人とクマーリ(Bhagyashri Borse)を巡る三角関係、マハーデーヴァンと妻デーヴィ(Gayathrie Shankar)の確執など、終始うねうねした展開となっていたのだが、これまた後で思い返してみれば、意外と単純なものだった。つまり、テンポが悠長で、うねうねとした見せ方をしていたが、その実、ストーリーは単純で、これで2時間43分も付き合わされたとは、何か非常に損をしたような気分になった。
・しかし、面白い映画だったと言える。1950年代の、映画がまだ大衆に大いなる夢を与えていた時代のタミル映画界を舞台にしたドラマで、撮影や衣装、大小道具など、完全にレトロなムードを作り出すのに成功している。これは酔える。どうやら撮影監督(Dani Sanchez-Lopez)が【Mahanati】(18)と同じらしい。
・映像も凝っている。クローズアップや長回し、白黒とカラーの巧みな組み合わせ、劇中劇でのアスペクトの切り替え、鏡の効果的な利用など、監督のセルワマニ・セルワラージという人はこれがデビュー作らしいが、そうとは思えないほど、いろいろな技巧を考え、表現している。
・ストーリーも悪くないのだが、ちょっと凝りすぎで、そこは新人監督、狙いすぎたかな?と思った。上で「ストーリーは単純」と書いたが、なるほど出来事の継起という面では単純だが、主要登場人物の心理という面ではかなり複雑で、本作を難解なものにしている。これは興行面ではネックとなるかもしれない。ただ、映画中にも「観客の記憶は50年もすれば消えるが、映画はそれ以上持ちこたえなければならない」という台詞があり、セルワマニ監督自身の考えではない可能性もあるが、監督はやはり大衆受けする映画より、芸術的価値のある映画を作りたいという意識をお持ちなのでは?と感じた。
・本作の難点をもう一つ言えば、愛憎の心理ドラマにしたかったのか、犯人捜しのミステリーにしたかったのか、どっちつかずになっているという点だ。監督はおそらく前者を重視したかったのだろう。後半のフェニックス警部の展開は、観客は最終的に犯人も犯行動機も分かるのだが、それは映画としておのずと観客に知れるよう見せただけで、警部の推理によるものではない。実際、警部は有効なことは何もしておらず、この点で謎解きミステリーとして見た場合は拍子抜け。
・しかし、監督が重視したと思われる心理ドラマという点でも、上で書いたとおりかなり難解で、ウペンドラの映画を文学的にしたようなもの、と言えば、分かってもらえるだろうか(いや、分かるわけない)。かなり痛切な結末で、こういう映画を好む人々は確実にいるが、しかしインドの大衆は好まない(敬遠する)だろう。
・本作は当初、タミル映画界初のスーパースターと称されるM. K. Thyagaraja Bhagavatharの伝記ものか、とも言われたらしいが、製作チームは完全にフィクションだと否定し、実際にそうだろう。ただ、M・K・ティヤーガラージャ・バーガヴァタルと本作のT・K・マハーデーヴァンは、共にスーパースターであること、歌が上手いこと、殺人事件に関与したとして逮捕投獄の履歴があることなど、若干ヒントは得ているようである。また、イニシャルも、前者はMKT、後者はTKMと、順序をひっくり返すぐらいの洒落っ気は込められている。
・面白いと思った台詞。プロデューサーの台詞だったかな、「(映画がヒットしなくて)お金を失ってもいいが、良い俳優を失うことはできない」。また、フェニックス警部が、マハーデーヴァンは「演技の神様」と呼ばれ、ある映画では一人十六役を演じたと聞いて、「なんだ、他に役者がいなかったのか?」と応じる台詞。
・【Mahanati】や【Kurup】(21)、【Lucky Baskhar】(24)など、時代もののヒーローが絵になる、まさにミスター・レトロと呼びたいドゥルカル・サルマーンは、本作のプロデューサーの1人。だからと言うわけではないと思うが、芝居には気合いが入っていた。男前で、すでに映画界で安定した地位を築いているとは言え、演技的には高く評価されてこなかったDQだが、本作では難しい役柄をかなり的確に演じている。個人的には何かで賞を取らせてやりたい。
・アイヤー役のサムドラカニ然り。この気難しい老映画監督の内面をこれほどデリケートに演じられるなら、もう映画など撮らなくて、俳優一本でやるのもありだと思った。ちなみに、この「アイヤー」はこの人物の本名じゃなく、通称だろう。
・フェニックス警部役のラーナー・ダッグバーティも、本作のプロデューサーの1人。後半からの登場で全く空気を変えてしまうほどの存在感はさすがだが、この警部をこれほどまでにキャラの立った人物にする必要はあったのかという疑問はある。しかも、事件を解決していないし。まぁ、面白かったから、いいか。ちなみに、この「フェニックス」というのも通称だろう。
・さて、アクセントを付けるためにあえてトリに持ってきたが、クマーリを演じたバーギャシュリー・ボールセーが光っている。この人はインスタやXのタイムラインにちらちら出てきたので、ずっと前からフォローしており、早く銀幕で見たいと思っていた。本作を観たのは結局彼女が目当てだったとも言える。顔の造作としては、完璧な美人というわけではないが、女優としての魅力はすごくある。特に目が良い。アウランガーバード出身らしく、南インド映画では台詞には声優が付くと思われるが、インディー語映画でも活躍できる逸材だと思う。
《 オマケのひと言 》
・マハーデーヴァンが義父の60歳の誕生プレゼントに世界に3つしか存在しない腕時計を贈るが、他の2つを持っているのはハンフリー・ボガートとウィンストン・チャーチルだった!
◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★☆☆
◆ 必見度 : ★★★☆☆
《 鑑賞データ 》
・鑑賞日 : 11月22日(土),公開第2週目
・映画館 : PVR (Superplex Forum Mall),12:55のショー
・満席率 : 6割
・場内沸き度 : ★☆☆☆☆
・英語字幕 : あり
《 参考ページ 》
・https://en.wikipedia.org/wiki/Kaantha
・https://www.imdb.com/title/tt28508934/
この記事へのコメント
iseebi
レトロの映画界モノに確かにピッタリのDulquer君でしたが、う~ん、画面がほぼ暗いのと、監督は、ホラー映画の提案をされていたようだけど、映画撮影の場面には退廃的な鏡割りシーンとかあったので、霊に憑かれたのかと違う意味でワクワクしていたが、割と普通にミステリーでもないミステリー、徹底的に恋愛ドラマでもなく、徹底的に「映画界」モノとも思えず、焦点散らかりすぎやん、と思いました。IMDBで星8.5ついてたので、期待しましたが。Ranaは いつ見てもデカイ。コミカルなイジイジ感でしたね。
川縁長者
お久しぶりです。
確かに焦点散らかりすぎでしたね。力作で、それなりに面白いのですが、残念な気もします。
パフォーマンスはそれぞれ良かったですが、ラーナーはちょっと浮いてましたね笑