【Sarvam Maya】 (2025 : Malayalam)
題名の意味 : 全ては幻想
映倫認証 : U
タ イ プ : オリジナル
ジャンル : コメディー/ファンタジー
公 開 日 : 2025年12月25日(木)
上映時間 : 2時間27分
監督 : Akhil Sathyan
音楽 : Justin Prabhakaran
撮影 : Sharan Velayudhan
出演 : Nivin Pauly, Riya Shibu, Aju Varghese, Janardhanan, Preity Mukhundhan, Anand Ekarshi, Raghunath Paleri, Madhu Wariar, Vineeth, Methil Devika, Dhruvan Sankar, Jaya Kurup, Saumya Bhagyan Pilla, Vijilesh Karayad, Arun Ajikumar, Basil P Reji, Alphonse Puthren, RJ Twinkle, Priya Prakash Varrier(特別出演), 他
《 プロット 》
プラベーンドゥ・ナンブーディリ(Nivin Pauly)は才能豊かなギタリストで、ミュージシャンとして身を立てたいと考えていた。彼はブラフミンの家に生まれたが、無神論者で、家を出て厳格な父(Raghunath Paleri)や兄(Madhu Wariar)とは疎遠になっていた。母とは死別していた。ときに、イギリスで仕事をするという話があり、ビザを申請していたが、手違いで却下され、その夢も途絶える。ちょうどその折に祖父の70歳の誕生日を祝う儀式が行われることになり、彼は故郷のケーララ州パーラッカードのオッタッパーラムに帰省することにする。そこでお金の必要から、またおじのプラフラーダン(Janardhanan)に諭されたこともあって、プラベーンドゥはいとこで僧侶をしているルーペーシュ(Aju Varghese)のプージャの助手をすることにする。
ある日、ルーペーシュが怪我をしていたため、プラベーンドゥがある弁護士の家に悪魔祓いに行く。その家の息子アヴィナーシュ(Basil P Reji)に若い女性の霊が取り憑いているというのだ。プラベーンドゥはいい加減に祈祷を行うが、あろうことか本当に霊がアヴィナーシュから出て行く。しかし、その後、プラベーンドゥの身辺で奇怪ことが起きる。注文してもいない女性用のクルタが家に届いたり、自分のSNSの画像がK-POPの歌手の写真に変わっていたりと。そしてある夜、プラベーンドゥは遂に自分の寝室で若い女性の幻影を見る。つまりアヴィナーシュから追い祓った霊が自分にまとわりつくようになったというわけだ。
だが、その女性(Riya Shibu)の霊は恐ろしいものではなく、全く人間と同じで、フレンドリーでさえあった。その姿はプラベーンドゥにしか見えない。彼女は記憶を一切失っていたため、自分のことを「デルル」と名付ける。ひょんなことからキリスト教徒らしいということが分かったため、プラベーンドゥはデルルと一緒に教会や大学へと行くが、彼女の身元の手掛かりは得られなかった。
プラベーンドゥは友人のファイザル(Anand Ekarshi)を通して、ムンバイのボリウッド映画の音楽監督ヴィラージのオーディションを受けることになる。ヴィラージの要求は高く、プラベーンドゥは不合格になりかけるが、その時、デルルが演奏のアドバイスをし、おかげでプラベーンドゥは合格、ムンバイで実際に演奏することになる。プラベーンドゥのムンバイ行きにはデルルも同行する。その飛行機での移動中に、デルルは自分がかつてベンガルールにいたことを思い出す。
ムンバイではサーディヤ(Preity Mukhundhan)という女性がコーディネートすることになる。サーディヤは失恋したばかりだった。プラベーンドゥは彼女に失恋話を聞かされる。その様子を見て、デルルは自分もかつて誰かと恋愛関係にあったことを思い出す。
二人はケーララに戻る。プラベーンドゥは父との関係が良くなかったが、父に関する思いがけない事実を知り、二人は和解する。それを見てデルルは何かを思い出しかける。プラベーンドゥの許にはサーディヤから頻繁にメッセージが届いていたが、彼女のいとこの結婚式に招待されたため、再び彼は、そしてデルルも、ムンバイに行く。結婚式の後の車の中で、デルルはプラベーンドゥに自分がプラベーンドゥを愛していることを打ち明ける。しかしプラベーンドゥは幽霊との関係はあり得ないと答える。そして車から降りるなり、事故に遭いそうになるが、間一髪でデルルがそれを救う。その瞬間、デルルは記憶を全て取り戻す、、。
・他の登場人物 : ヴィノード・マーテュ・マンジューラン(Vineeth),アーニ(Methil Devika),チャーコー(Dhruvan Sankar),トゥラシ(Saumya Bhagyan Pilla),アニモン(Vijilesh Karayad),飛行機内の女性(Priya Prakash Varrier)
《 コメント 》
・明けましておめでとうございます。新年の初インド映画鑑賞だが、実はこの映画はクリスマス公開のもの。と言っているうちにサンクラーンティなので、2周回遅れのランナーになった気分。まぁ、マイペースながらももうしばらくインド映画は観続けますので、本年もお付き合いのほどを。
・新年早々、良い映画に当たって、ハッピーだ。非常に爽やかで、カワユい映画だった。正月ぐらいは焼け野原悲劇や流血三昧から逃れたいよね。監督がアキル・サティヤンという人で、本作が醸し出している普通の人間のほのぼのしたドラマは、何だかサティヤン・アンティッカードの作品を思わせるなぁ、と思っていたら、アキル・サティヤンは本当にサティヤン・アンティッカードの息子だった。これはDNAの成せる業か、それともアキルが意図してオヤジの作風を踏襲したか?
・「普通の人間のドラマ」と書いたが、主要キャラクターは幽霊なので、全然普通の人間じゃないのだが、オカルト的な要素は全くなく、実質、人間ドラマだった。テーマはいくつか込められていると思うが、主テーマは心の浄化ということだろう。主人公のプラベーンドゥ(Nivin Pauly)は、概ね好青年なのだが、母の死を契機に父に不信感を抱くようになったり、ブラフミンでありながら無神論者を標榜したりと、微妙に世を拗ねたところがある。それが幽霊のデルル(Riya Shibu)と出会ったことにより、心に巣食うわだかまりが吹き飛ばされ、一段成長した人物になる、という話だったと思う。
・私は本作をいたく気に入り、良い映画だと思うのだが、脚本から見た完成度という点ではいまいちなんじゃないかとも思う。しかし、ここがいかんと欠点を指摘するようなことはせず、本作の爽やかで楽しいタッチが味わえればいいと思う。その清涼感の8割を醸し出していたのがデルルなのだが、事実、彼女はそよ風としてイメージされていた。その感覚はこのソングシーンを見れば分かるだろう。
Puthu Mazha
https://youtu.be/scRQR-FRfIo?si=3rXRyVL16h-5x2hw
・実はプラベーンドゥとデルルの交流はきっと2,3か月程度のことだと思うが、そのごく短期間の出来事がプラベーンドゥの人生を大きく変え、デルルはずっと心に残る存在となる。こういう経験は誰しもあるのではないか。例えば、子供のときの夏休みなどで、どこか別の町から知らない子が親類の家にやって来て、その子と1,2週間遊び、いろいろと影響を受けた経験がずっと良い思い出として心に残る、そういう懐かしい感覚をこの映画は描きたかったのではないか。
・それはおそらく愛というものの純粋な(というか、原型的な)形だと思うのだが、それはプラベーンドゥに幽霊には身体がないから恋愛関係は不可能だと言われたときの、デルルの「愛は身体的なものじゃない」と言い返す台詞によく表れていると思う。
・そしてマラヤーラム映画らしく、またサティヤン・アンティッカード風の映画らしく、知的な風刺が散りばめられているのが良い。風刺と言っても、本作の場合は辛辣なものではなく、それもカワユい。いろいろなネタはあったが、最も顕著なのはブラフミン茶化しだろう。プラベーンドゥはブラフミンの中でも祭祀を執り行うオーソドックスな家系の出でありながら、無神論者だと言っている時点でズッコケる。こういう設定がさらりとできるのがケーララらしく、例えばウッタル・プラデーシュ州なんかだと、こういう映画を作ろうという空気もないのではないか。ヒンドゥー教のプージャが即物的で俗っぽいといのがよく分かるのはこちらのソングシーン(アジュ・ヴァルギースが僧侶役をやっている時点で風刺コメディーだが)。
Vellarathaaram
https://youtu.be/BVgNoVwsb6Y?si=wgOMfJBpPCsP3M4U
・割とオーソドックスなマラヤーラム映画のテイストだが、親父の世代とは差別化したかったのか、アキル・サティヤン監督は意図的に若い世代(Z世代とか言われる)の意識とかスラングを多く取り入れている。最も顕著なのが幽霊の名前の「デルル(Delulu)」だが、これはデルル自身が「delusion」の略だと言っていた。出どころはK-POP界隈で広まったネットスラングだろう(こちら)。(発音は「ディルールー」か「ドゥルールー」になると思うが、本作では「デルル」か「ディルル」と発音しているように聞こえた。)
・ニヴィン・ポーリの映画を観るのは久々だなぁ、と思っていたら、どうやら本当に彼の出演映画は興行的に不振続きだったようだ。ここしばらく躍進の著しいマラヤーラム映画だが、ニヴィンは蚊帳の外だった? だが、本作は100カロール越えの大ヒットとなり、面目躍如といったところか。本作のプラベーンドゥはインド映画の主人公にしては地味すぎるが、良かった。
(写真下: 幽霊と出会ったときの絶妙な表情のニヴィン。)
・賞賛されているのがデルル役のリヤ・シブ。全く知らない人だったが、著名な映画プロデューサー、シブ・タミーンスの娘さんらしい。まずは映画のプロデュース業から始め、女優としては本作が2作目らしい。まだお若い(Wikipediaによると21歳)のに、立派なものだ。【Premam】(15)のサーイ・パッラヴィと似たような印象を受けたが、ダンススキルはがくっと落ちる。
(写真下: 映画中のデルルの本名は「マーヤー・マーテュ・マンジューラン」。)
・その【Premam】のアルフォンス・プトラン監督がカメオ出演している。(アルフォンス・プトラン以外にも、なぜか本作には映画監督が何名か出演している。)
・アジュ・ヴァルギースがバラモン僧あるあるを演じていて、笑えた。というか、見るたびに肥満度が増していて、アジュだと気付くまで時間がかかった。
・注目していたのはサーディヤ役のプリーティ・ムクンダン。本編を観るまではこの人がヒロインだと思っていたが、あまり重要な役回りでもなかった。きれいなソングシーンもあり(こちら)、持ち上げようとする意図は感じたが、やはり無駄遣いだった感がある。
・生前のデルルの父親を演じたのは何とヴィニートだった! それも驚きだったが、母親役が別嬪メティル・デーヴィカーだったので、さらに感動した。
(写真下: メティル・デーヴィカーさん。本作のスチルではありません。)
・プリヤー・プラカーシュ・ワーリヤルが飛行機内のシーンでカメオ出演していた。
《 オマケのひと言 》
・ロケ地(プラベーンドゥの田舎)はケーララ州パーラッカードのKollengode、Ottapalam、Shoranurらしい。デルルの田舎は美しいヒルステーションのKuttikkanamらしい。
◆ 完成度 : ★★★☆☆
◆ 満足度 : ★★★★☆
◆ 必見度 : ★★★★☆
《 鑑賞データ 》
・鑑賞日 : 2026年1月10日(土),公開第3週目
・映画館 : PVR (Global Mall),14:55のショー
・満席率 : ほぼ満席
・場内沸き度 : ★★★☆☆
・英語字幕 : あり
《 参考ページ 》
・https://en.wikipedia.org/wiki/Sarvam_Maya
・https://www.imdb.com/title/tt32362695/
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